あかいろのしずく


時計の長針が12と重なり、俺は藤谷の腕を無理やり引っ張った。衝動に駆られたみたいだった、気づいたら、体が動いていた。


ベッドの上に倒れ込んだ藤谷の、服のポケットを探す。「ちょっと」と藤谷は抵抗する。隠そうとする手を退けて携帯を掴もうとするも、藤谷は譲らない。


そのまま俺の手を振り切って、藤谷は逃げようとする。


俺はベッドから下りて、足元が安定しないまま藤谷をまた掴んだ。その勢いが抑えきれず、今度はそのまま縺れ込み、俺と藤谷は同時に床に倒れる。


鈍い音と共に、カタン、と無機質な音が藤谷の元から弾きだされた。それを俺は、体を打った痛みを感じながらもしっかり耳に留めていた。俺はすぐにそれを掴んだ。




「あ」




藤谷が起き上がり、ハッとして声を漏らす。