最悪力ずくで奪っても良かった。
けれど俺が携帯を探していたことは、もうとっくに藤谷にバレている。俺が奪おうとしたって、きっと藤谷は逃げる。
俺は仕方がなく藤谷の言ったことを認めた。すると、藤谷は少し困った顔をして「そうだと思った」と笑った。
けれど、俺には余裕があった。
藤谷がそれを知ったところで、何もないのだ。脅すことも、俺に危害を加えることも、今までの藤谷の言動を見ていればできるはずがないと思った。
だから、
「今から五分後に、西平くんがあなたを迎えにここに来るの」
それを聞いた時、背筋が凍った。
時計を見れば、あと五分で十時になる。
本当に? 西平が来る?
信じられなかった。
「だからいいこと、教えてあげるね」



