今まで、俺がどうしてこんなことをしているのかとか、西平のことをどう思っているかとか、何一つ俺に聞こうとしなかった藤谷。
その質問にはきっと意味があるのだと、俺は思った。
だから答えたかった。そんなの自分のためなんだろ、そう俺は答えた。
そしたら藤谷は首を振った。
寂しそうな顔をして、首を横に振った。
その時初めて、俺は藤谷に拒絶されたように思えた。
いつもぼんやりとして何を考えているかも分からない藤谷が、ちゃんと自分の意志でしっかりと「いいえ」と口にしたのだ。
なんとなく、悔しかった。
腕の処置はもうとっくに終わっていた。
俺は正直、あいつの気持ちを知ってどうするんだよ、と思っていた。
だから「そんなの分かるわけない」と言った。別に言った後に後悔もしなかった。
藤谷はそれを聞くと、黙ってスタスタと部屋を出て行った。



