藤谷と一緒にご飯を食べるのは、違和感がなかった。慣れてしまったのだ。
案外ここでの暮らしは悪くなかった。西平のところではご飯も温かくなかったし、自由もきかなかった。まあ、これは何度も言っていることだが。
その上よく考えてみれば、俺はここ最近一切勉強をしていない。今がそういう環境じゃないからなのはもちろん承知だが、受験生なのにどうなってるんだ、って話だ。
けど、ここに来てなんだか、そんな不安も無くなった気がする。
雰囲気だろうか、藤谷の。
俺まで流されそうなおっとりとした空気が、この診療所を乗っ取っている。それは悪いことなのか、良いことなのか。
分からないけれどなんとなく、俺はこの先も藤谷と二人でここで暮らすんじゃないかと思い始めていた。



