その日の夜、俺は診療所を抜け出して、町へと向かった。
ぽつぽつと道に一定の間隔で置いてある水銀灯の明かりを頼りに、歩いた。全く知らない道だったから、戻って来れるか心配だった。
まあ、そうは言っても田舎町だ。
最初は田圃に囲まれた一本道だった。住宅街に入るまでは大丈夫だろう。
見上げれば空は真っ暗で、星がばらばらと散っていた。どこを見ても空に雲はなかった。あるところでは月の光がぼんやりと広がっていた。
息を切らしながら歩いて、住宅街を抜け、もう何十分歩いただろう。一時間ぐらいだろうか。足が痛い。肺も痛い。
一度倒れただけで脆くなってしまった自分の体。
なんだかな、と自嘲気味に笑う。



