ここまで来ると、藤谷が何をしたくてこんな「監視役」なんて役割を引き受けたのか、いよいよ疑問に思う。
彼女なりに理由があるのだろう。別に根掘り葉掘り聞こうとは思わないけど、気になった。もう少ししたら聞いてみよう。
「あ、そうだ」
はっと、思い出したように緒方が言った。
ポケットを漁る藤谷を横目に、喉が渇いた俺はペットボトルのお茶を飲んでいた。
「これ、落ちてたよ。大切なものだったりする?」
なんだろう、と思いそちらに目を向けた、その瞬間、俺はお茶を噴き出しそうになって堪える。
藤谷が持っていたのは、ショウトの家の電話番号を書いた紙だった。
ちゃんとジャンパーのポケットに入れたはず。まさか風に吹かれて落ちたのか?



