女性の名は藤谷(ふじや)といった。
ずっとにこにこしている、少し不思議なひとだった。
黒髪は後頭部で、さほど高くない場所で一つで結ってあった。
もともと髪が短いのだろう。結ばれた毛束はウサギの尻尾のように小さくちょこんとそこにあった。
服は真っ白のワンピース。一般にナース服というものだろう。
俺が小さな個室で待機している間、西平は俺のことを彼女に話しているようだった。
診療所は外から見てとても小さいように思えたが、中に入ると案外広かった。
少し気になったのは、土や埃などで少し汚れているところ。掃除をしていないのかもしれない。他にも管理が行き届いていないのか、窓ガラスが割れているところがあった。
そのせいで冬の風が入り込んで、どこに行っても外と変わらない空気に触れるしかなかった。



