あかいろのしずく



小さな診療所だった。駐車場も二、三台しか車が止められないくらいの広さだった。


車を駐車場に入れる時、建物の中から一人の女性が出てきた。西平と女性は、目が合うなり同時に手を振った。



「仕事仲間か何かですか?」



ショウトが尋ねる。
きっとあの人が俺の監視役なのだろう。




「いえ、友達です。大学の時の」





西平が口にした「大学」という言葉を、頭の中で繰り返す。


サユリは推薦があったけれど、実を言うと俺は普通の日程。併願は受けたけれど、メインの受験は二月の頭だったりする。


受験までもう一か月もない。


勉強ができないのはかなり不利だが、今までの積み重ねがあるからそこまで追い詰められているわけではない。勉強より今は、この緊急事態をどうにかしなければいけない。