それからパニック障害だと診断され、今こうやって西平に誘拐までされたわけだけれど。
「......。ショウト」
思えば初めてこいつの名前を呼んだかもしれない。
小声で呼んだのにもかかわらず、ショウトはちゃんと聞いていたようだった。こちらに怪訝そうな顔をして振り返る。
バックミラーで西平に確認されるとマズい。随分前から忍ばせておいたマジックペンをポケットから取り出すと、俺は自分の左の手のひらに文字を書いた。
――――家の電話番号をかけ
それを見たショウトは何とも言えない顔をして俺を見た。別にそういう意味じゃないから察しろ、と、睨み返すとショウトはペンを受け取る。



