「ありがとうございます、先生」



私が笑顔でそう言う。

そしたら、彼は驚いたように眼鏡の奥で目を見開いてから、



「......似てますね」



何かを呟いた。
聞き取れなくて、「え?」と聞き返す。



「いえ、こっちの私情です」




気のせいかな、なんだか、ほんの一瞬寂しそうに見えたのは。


先生が玄関のドアを開けても、それが私の中で引っかかって、私はもう一度「先生?」と聞いた。



なんだろう。
言葉じゃ表せないけど、先生ってどこか、変だ。