私が彼の問いかけに頷いて答えると、彼は「そうですか」と言って用箋ばさみに挟んである紙に何かをすらすらと書いていく。 「私の他にも何人かいましたよね、あれを見ていた人。そっちに行かなくても、大丈夫なんですか?」 今度は私が尋ねる。 そしたら男性は、一瞬驚いたように私を見て、すぐ笑顔になった。 「優しいんですね。他の人からはそういうの、聞かれませんでした」 きっと、余裕がないんだと思う。