「…あはは、まさか見抜かれるなんて」

 私はメニュー表をじっくりと見ている金井さんを凝視した。

 まだ、初対面同然なのにこんなに私を見て聞いてくれる人はいるだろうか。

 いや、いない。

「俺、決まりましたよ。理美さんは」

 メニューとにらめっこしていた金井さんは、満足そうに私に聞いてきた。

 私に寄り添うように話しかけてくる金井さんはキラキラ光ってみえた。

「あ、えーと、じゃあ、これにしようかな」

 私は金井さんが勧めてくれたドリンクとは別のドリンクを頼んだ。

 本当は金井さんが勧めてくれたドリンクを飲みたかったが、注文出来なかった。

 別のドリンクは、酸っぱい梅ドリンクだ。

「あのドリンクはいいんですか?」

「うん、大丈夫。今はいいかな。こっちの方が飲みたいなあと思って」

 私は金井さんを見て、きちんと答えた。

「そうなんですね。分かりました。じゃあ、頼みますね」

 素直に返事をした彼は少し不思議そうに私を見てきた。

 なんで、好きなのに頼まないんだと言いたいのだろう。

 頼みたいけど、頼めないの。

 金井さんが何ごともお見通しで、私自身が照れくさいんだよ。

 だけど、素直に答えれば良かったのかな。

「……さっきほども言いましたが、私は金井さんのこともっと知りたいんです」

 私は金井さんと向き合いながら、正直に思っていた気持ちをぶつけた。 

 すると、金井さんは私を見て、言う。

「ありがとうございます。そんなこと言われるの初めてなのでちょっと照れますね」

 金井さんは目を細めて笑いながら、私を見てきた。

「そうですか。結構モテそうな感じしますけどね」

「いやいや、全然。モテませんよ。女子から告白されたことないですし」

 両手を左右に振りながら、私に否定していた。

 いや、モテない訳がない。

 顔が整っているが上に、こんな可愛い顔をしてる。