「わかりますよ。雰囲気で。恵くんは本当に大切だったんですね」
金井さんはただ私を真っ直ぐに見つめて、私に話しかける。
「知ってたの?」
私は金井さんの言葉に目を丸くした。
人の話し声が聞こえる中、私たちの話を聞こえているはずなのに頭が真っ白になった。
好きな相手に知られるとは思わなかったから。
「はい。だけど、理実さんは断ったんですよね」
金井さんは髪を手でかいてから、金井さんが知る情報を私に聞いてきた。
「なんで」
私は涙ぐんで、金井さんを目を大きく開けて見つめた。
「さっき、恵くんから聞きました」
金井さんはさっき来たばかりなのに、恵さんからいつの間に聞いたのかと思った。
頭の中でさっきほどの光景を思い出した。
すると、あの時に聞いたのだと思えた。
恵くんは、金井さんの耳打ちをしていた瞬間があった。
その時に。
「…」
私は黙っていた。
何を話したらいいか分からなかったから。
「俺でいいんですか?」
金井さんは私との距離を詰めて行き、お互い真正面になっていた。
「……はい。私はあなたの理想の相手だから、金井さんがいいです」
私は金井さんの顔を見ると、真剣な表情をしていた。
周りの人は、チラチラと私たちを見るが、カフェの店内で立っていたので、気にする人もいれば、一人の時間を楽しむ人もいた。
「俺も理想の相手は、理実さんです」
照れた顔で金井さんは、私を見る。
「…私でいんですか?」
私は金井さんを見て、思う。
本当に私でいいのか。こんな私で。普通の会社員で、何のとりえもない。
「いや、むしろ俺でいんですか?年下だし、まだ学生だし」
自信なさそうに私をチラッと見てから、聞いてきた。
確かに。年下だし、まだ学生だ。
でも、理由は分からないけど。
一緒にいて、話をしたい。
笑っていたい。
「…私は金井さんがいんです」
私は目を大きく開けて、笑顔で金井さんに言った。
「俺もです」
金井さんは私を見て、頬を赤くして強い意志を示すかのように声を発した。
すると、私の右手首を持って、金井さんの胸に抱きしめられていた。
「あの…金井さん」
私は金井さんの胸に手を当てて、いきなり抱きしめられてので胸がドキドキが止まらない。
「…好きです」
金井さんは私の両肩を両手で掴んで、真っ直ぐに私に伝えてきた。
「…っはい」
私はいつもまっすぐに伝えてくる金井さんが好きだ。
学生だろうと。誰に何を言われても。
あの本屋で一目ぼれした時から、この人じゃないとダメな気がしていた。
「あの理実さん。俺の名前呼んで下さい。親しみを感じたいというか」
金井さんは照れながら、私に言う。
その姿を見て、愛おしく思えた。
私は微笑みながら、金井さんに答える。
「輝くん」
私はそういうと、嬉しそうに金井さんは繕う笑顔じゃなくて、
本当の満面な笑みで笑っている気がした。
周りに人がいることを忘れて、二人の世界に入っていた。
お互い目を合わせて、少し照れながら、私たちは手を強く握りしめて帰路に着いた。
三つ年下の彼と私の恋物語は、学生と社会人。
お互いを想いあっているなら、年の差なんて関係ない。
私たちは、進んでいく。大切な人とともに……


