「もしかして、輝が言っていた好きな人って」

「そう」

「ってか、恵くんとあの人知り合いだったの?」

「…らしいな」

「……どうすんの?これから?」

「……ゴメン。ちょっと寄ってから行く」

俺は駅より逆方向に行き、トボトボ歩いた。
廉が俺に話しかけてくれていたが、頭の中には、恵さんと理実さんの情景が浮かぶ。

隣にいた恵さんと理実さんはお似合いだった。
二人が並ぶと、絵になる。

その情景を浮かべると、グシャグシャと頭をかいて、あーと小さい声で呟き、自分の右手を握りしめた。

まさか、恵さんと理実さんが知り合いだとは。
もしかして、ずっと恵さんが好きだったのは。

いやいや、まさか。
でも、そんなことって。

俺は悶々と考えながらも、まさかのことを考えた。

いつの間にか近くにあったベンチに座り込んだ。

考えれば考えるほど、マイナスな方向に考えてしまう。ダメだ。

俺は意を決して、携帯を開いて、理実さんにラインをした。

さっき程は邪魔して、すいません。
明日の夜、空いてますか?

とラインをした。

返ってくるかはわからないが、今悩んでいることを理実さんに聞きたい。



「驚いたな。まさか、輝と知り合いだとは」

俺は正直まいっていた。
真正面に暦ちゃんがいるが、ただ目を丸くしていた。

「まあ、はい」

暦ちゃんは返事をして、テーブルに置かれている紅茶を手にして飲んでいた。

「…あのさ、いやまた今度にしよう」

俺は今考える余裕がない。
偽りの笑顔を浮かべて、席を立った。

「はい」

暦ちゃんも素直に返事をしてくれて、安心していた。
暦ちゃんの顔すら見れなかった。

「じゃあ、行くね」

俺は今ここにいると、ただの嫉妬でおかしくなりそうだったから。