がなかったよ。恵と比べると、全然ダメだなって思ってた」

 ただ私に話していたが、亮介は一人で話しているようにも見えた。

 私のことは見えているように見えるが、見えていないようにも見えた。

 亮介。私が知っている亮介は、いつも明るくて、場の雰囲気をよくしてくれる人。 

 こんなに悩んでいたなんて、知らなかった。

「それは…」 

 私は口を詰まらせた。

「わかってるよ。俺は俺だって。でも、今は昔と違う。理実。好きだ」

 亮介は、真っ直ぐに私が好きだと言った。

「……私、好きな人いるの。亮介はいいやつだってわかってる。けど、私は」

 俯きながら、私は亮介に素直な気持ちをぶつける。

「……知ってる」

「え?」

 なんで、亮介が知ってるの。

「顔、見れば分かる。そんな顔知ってるの久々に見たからな。どんな人なんだ」

 亮介はくすりと微笑んだ後、私を見ていた。
そんな顔させたくないのに。

 でも、わかってしまうのだ。一番男性の中で、親しんでいたから。

「年下。大学生」

 私は呟くように亮介に言う。

「…そんなに好きなのか?」

 年下なことに驚いたのか、目を丸くさせて、亮介は私に聞いてくる。

「…一生懸命でまじめで面白くて。好きだよ。相手はどう思ってるかは分からないけど」

 私は素直に、彼の惹かれているところをすぐに出てきた。

「…そうか。それでも、俺は言えてよかったよ」

 亮介は私の言葉を受け止めて、返事をしてくれた。でも、亮介ならもっと何か言うと思
ったんだけど。なんでだろう。

「……ゴメン」

 私は、謝った。

「謝るなよ」

 私から目を逸らして、気まずそうな顔で私に言う。

「亮介。なんでそんなすぐに受け止めたの?」

 私は亮介がすぐ身を引いたのが不思議に思えた。

「…それは、理実に幸せになってほしいからだ」

 亮介は、スプーンを片手に持って、私の方を見て、真剣に言った。

「……あ、う、うん」

 私は泣きそうになった。だって、こんな私を思っているのに。振った事実は変わりない。

「冷めるぞ。早く食べよう」

 亮介は私にそう言ってから、そのあと、無言で食べた。

「…美味しかったね」

 私は会計を済ましてから、喫茶店を出た。
 その後に、亮介も会計を終えて出てきた。 

「あそこは俺初めて食べたけど、うまかった。
ありがとな、理実」

 亮介は財布をカバンに入れてから、私と向き合う。