無理もない。今日久しぶりに会ったばかりだ。困惑するに決まってる。

 だけど、本心なんだ。僕の。

「無理とは言わないから。考えてほしい」

 暦ちゃんにそう言ってから、俺は後悔と喜びが入れ混じっていた。


 私は恵くんに会ってすぐに家に帰り、まだお昼前だというのに寝てしまった。

 バスで帰り、布団にかぶって寝ていた時、電話の音が鳴り響いた。

「はい。暦だけど」

 それは、琴美だった。

ベッドの近くにあった時計を見ると、夕方になっていた。

「電話したんだけど、今日仕事休み?」

 琴美は何かを片付けているのか物音がする中、私に話しかけてきた。

「……色々あって、休み」

 私は眠たい目をこすりながら、琴美の電話に答える。

「亮介先輩から連絡きたんだけど、なんかあった?」

「……ほんと色々ありすぎて、訳分からなくなってる」

 私は思わず亮介という言葉に反応してしまった。

「亮介先輩。理実と話せないから。私から連絡してほしいって。どうしたの?」

「話、長くなるけど。時間ある?」

 私は琴美に話したいことがたくさんあった。

「……わかった。いいよ。じゃあ、私が理実の家に行くから」

「え?いや、いいよ。わざわざ」

「いいの。仕事で近くまできてるから。18時には着くから」

「え?待って。琴美」

 ブゥブゥと電話が切れた。

「もう一方的なんだから」

 だけど、私を心配しているのだと思う。
 高校の時もそうだった。

 私が誰かに話を聞いてほしい時に察してくれて、いつも私の家に来てくれた。

 それが、何より嬉しかったのを覚えている。

 それから、数時間後

「はい」

 ピンポーンとベルが鳴り響いた。

 琴美が元気よくインターホンからでていた。

「琴美です!」

「……どうぞ」

 私は素っ気なく返事をして、扉を開けた。

「琴美。静かにインターホンでてよ」 

「ごめんって。なんとなく元気に出た方がいいかなと思って」 

 両手を合わせてから、琴美は私に謝っていた。

「もう。まあ、いいや入って」

 それを見た私は目尻を下げて、琴美を見た。

 仕事帰りだからか、疲れた顔をしていた。
疲れているのに、来てくれるだけで有難い。 

 私は一人暮らしなので、少し汚くなっていた部屋を素早く片付けて、琴美を部屋に上げ
た。

「全然、変わってないね。この部屋」