「ゴメン、遅れた」

 私は恵くんと会う約束になり、その約束の時間になったので、さっき程行った喫茶店に足を運んだ。

「大丈夫。まず、ここ座って」

 恵くんは喫茶店のテーブルで待っていたので、私は急いで恵くんのとこに行って椅子に座った。

「ほんと久しぶり」

私が座ると恵くんがそう言ってから、テーブルにあったメニュー表を手にした。

「久しぶり」

 私は恵くんの動作を見つながら、答える。

「……あのさ、暦ちゃん」

「はい?」

「いや、なんでもない。何頼む?俺腹減ったんだよね」

「じゃあ、選びましょう」

「これにしよう。暦ちゃんは選んだ?」

「はい、選びましたよ」

 私は指を指しながら、恵くんに言う。

「了解。じゃあ、頼むわ」

 恵くんはそう言ってから、知り合いの店員を呼んで注文した。

 ヒソヒソと知り合いの店員と恵くんは話していた。何を話しているのかは分からないけど。

「うん、そういうこと。だから、邪魔しないでね」

 ニコッと笑顔で恵くんは、知り合いの店員に言う。

「何か話あったんですか?」

「いや、なんもないよ」

 恵くんは、ただ笑顔で私に笑いかけていた。
 やけに笑いかけられると、逆に気になる。

「それならいいですけど」

 私は目を逸らしながら、恵くんに言う。
 コソコソ話し合うなら、普通に話してほしいと思った。

「……敬語やめてもいいんだよ」

「え?いや、だって先輩ですから」

「あの頃のように親しくしてもらえると嬉しいな」

「……あの頃とはもう違いますし。亮介の友人ですし」

「亮介には普通に呼び捨てで、俺は違うんだね」

 飼い主の犬が困り果てたのような目をして、うるうるとしていた目で見てきた。

 この目には私は負ける。

初恋の人であり、初彼氏の恵くんにそう言われると、なんでもオッケーしてしまうのだ。

 高校時代の時もそうだったけど、今は違うと思いたい。

「…亮介は友達みたいな感じだから、恵くんと少し違うんです。恵くんは高校時代から憧
れな人だから」

「…亮介もかわいそうだな」

 恵くんは小さい声で呟いた。

「え?なんて」

 私は聞こえなかったので、もう一度恵くんに聞く。

「いや、なんでもない。憧れか。俺はそんな人じゃないけどな」

「いやいや、ほんと皆の憧れだよ。恵くんは気付いていないだけで」

「……そんなことない。俺はそんな人じゃないよ」

 恵くんは下を向いてそう言ってから、私を見る。

「…じゃあ、恵くんはどんな人だと思うの?」