「少しはよくなった?」
私は歩いてすぐに本当に尊くんが住んでいるマンションがあった。
いつも行っている喫茶店とすぐ近くだし、私の職場からも近いとは。
「ごめんね。着替え借りちゃて」
私は尊くんの部屋にお邪魔した。
男一人で住んでいる部屋に入るのは抵抗があったが、服が濡れてしまったのであがることにした。
「いいよ。別にあとで返してもらえればいいから」
尊くんはタオルで頭を拭いて、私を見て話をしてくれた。
「ありがとう」
私は服が乾くまで、尊くんの服を借りた。
すると、尊くんはジッと私を見てきた。
「な、なに」
「……いや、別に」
尊くんは私を見ては目を逸らしていた。
「なによ。女子いれるの初めてじゃないでしょ」
私は尊くんにちょっかいを出して、いつものノリで尊くんに話す。
尊くんは私を見てから、私の頭を手で掴む。
「ちょっと……!?何」
「なんでもねぇよ」
尊くんは私の頭を手で掴んでから、キッチンのほうに行き、なにかを作り始めた。
「なんか作ってるの」
「ああ、ちょっとしたものだけどな」
「そう」
私は足音を出さずに、尊くんが作っているキッチンに足を忍ばせる。
「そんなことしなくても、わかってるから」
私は足をソッと床につこうとしたら、尊くんが後ろを振り返り、私を見てきた。
「ゲッ、バレた」
「バレないと思ってたのかよ」
「……バレないかと思ったから」
「結局バレたからな。ほら出来たぞ」
尊くんは、温かいうどんを作ってくれた。
「ありがとう」
私と尊くんは部屋にあったテーブルに座り、うどんをすすって食べた。
「うん、おいしい」
私はそう言うと、尊くんは箸をテーブルに置いて聞いてくる。
「暦、言いづらいかと思うけど。もう一度聞く。何があった」
私はうどんを啜るのをやめて、尊くんを見た。
尊くんはテーブルに頬杖をつけて、ジッーと何も言わず見てきた。
早く話せと言っているのか、尊くんが私を気遣ってくれているのかどちらかではあるが尊くんの心の中が分からない。
「…私は…」
私は声を出して、真正面にいる尊くんに言う。
「ん、ゆっくりでいいよ」
「…亮介とさっきまで会ってたんだけど。亮介は優しいし明るくていいやつ。けど、高校の亮介が好きだった。今の亮介は分からない」
「あ、亮介って暦と付き合っていたやつか」
「…よく覚えてるね。人にあまり興味ないのかと思ってた」
「…覚えてるよ」
尊くんは笑顔で私に言った。
「….…私は亮介をどう思ってるのか自分自身が分からなくなって」
「……それは、暦はわかってるんじゃないかな。もう暦の中で決まってる気がするけど。さぁ?早く食べないと冷めちゃうから」
尊くんは私にそう言って、箸を持ちうどんをすすり始めた。
それを見た私はまた箸を持ち、うどんを食べた。
食べながら、尊くんが言っていたことを思い出す。
私の中でもう答えが決まってる。
と私に言った尊くんの言葉を繰り返し頭の中でリピートした。
だけどそれが分かるなら、教えてほしい。
と私は心の中で考えていた。