私の名前は暦理実(こよみ・りみ)。二十三歳。

 社会人一年目の新米だ。
 
 毎朝、中央駅から高木東バス停で降りて、職場へ向かう。

 歩きながら考え事をするのが好きだ。

 冷たい風が頬を撫でると、不思議と心が晴れやかになる。 

 すると、いつも朝早く来ている竹林(たけはし)さんが目に入った。

 化粧っ気のないすっぴんの顔。
 
 透明感のある肌は、年齢を感じさせない。

 どこか掴みどころがないが、優しさと気配りだけは確かな女性だ。

「私らしくいられる場所」。 

それを見つけるのは、まだ難しい。

小学生の頃からの目標は、ただ「自分らしく生きる」ことだった。

でも、それがどんな形なのか、まだ手探りの状態だ。