きらきら光る

「陽咲」
俺の声に彼女が振り向く。

いつものように屈託のない笑顔を向ける彼女に悩みも全部吹き飛ぶような感覚を覚える。

笑顔のまま駆け寄る陽咲に左手を差し出すと陽咲は右手で握り返す。その力が日に日に強まることに喜びを感じながらふたり並んで歩き始める。


「今日はなに食べる?」
俺の言葉に陽咲は悩んだ顔をする。

「さっぱりかこってりか」
答えようとして陽咲は口を動かす。

声はでなくても話そうとする陽咲は声がでない度に寂しそうな顔をする。

俺は彼女の手を握る手に力を込めて「俺はさっぱりだな。やっぱりアラサーの男にこってりはちょっとな」とおどけて見せる。