「おう。」
玄関に立っているのが優子じゃなく蒼介だったことに驚いていると蒼介が私の頭をぽんとたたく。
「あからさまに驚くなよ。優子じゃなくて悪かったな。あいつは委員会で今日早いんだよ。」
「そっか。」
私は蒼介と学校に向かって歩きだした。

すっと車道側を歩く蒼介はこっちを見ない。なにも話さない。

気まずくて私も黙って歩いた。

そのまま電車に乗るといつものように満員だった。

「こっち」突然蒼介に声をかけられて顔をあげると、その瞬間私の腕をひいて蒼介は壁際に立たせてくれた。そして私の手を手すりに持っていく。

「ありがとう」「おう」私が蒼介を見上げると蒼介はまっすぐ前を見ていて私を見なかった。