お願い、好きって言わないで。




嫌いになられたらなられたで、今の私がどうなるかだなんて想像はつくのだけれど。

結局はそれを恐れている自分がいた。


「みてくれるって、教えてくれるってことだよな?」


「そうだね。でも智也なら大体解けるか」


席に座る智也の近くに立ち、少し屈んで解いてる問題を覗く。


すごい丸ばかり。
しかも、途中の式まで丁寧に書かれている。

すごいな、なんて思いながら感心していたその時。


「あ、綾ちゃん椅子ないよな…」


急に智也が振り返り、すごく近い距離で目が合ってしまう。
少し動けばキスできそうな距離。

思わず顔を背ける。


「綾ちゃん?なんでこれだけで照れてんの?」

その声はバカにしてるような感じではなくて、本気で驚いている様子。


「照れてないから……で、何?
どこがわからないって?」


「え?俺わからないなんて、一つも言ってねぇんだけど」


ああ、何焦っているんだ私。
落ち着け、相手は五つ年下の高校生だ。

そんな人に胸がときめくだなんて大人としてどうなんだ。