どうして、智也も雅さんも、こんなに優しいのか。
こんな私に対して、どうして優しくしてくれるの?


「ただ、別れたことは黙っておこう。綾さんもそっちの方がいいと思うし、軽い気持ちで付き合ったって思われたくないから。

ちゃんと本気だったよ。
これからはまた先生としてよろしくね」


「……雅さん」

「ほら、そんな顔しない。俺だって弱っている綾さんに近づいたずるい男なんだ、ここは互いに責任があったことにしよう」


これでどうかな?と聞いてくれる雅さんは、少しでも私の罪悪感を減らそうとしてくれていた。

本当に、私にはもったいないくらいの良い人だ。

「雅さん。私も、本気で向き合おうと思ってました。
でもすいません、いつまでも中途半端で……」


泣くな、泣く資格なんてない。
ぐっと泣くのをこらえると、雅さんが私の頭に手を置いて笑う。


「ここで泣いたらダメだよ?
本気で向き合おうとしてくれただけでも嬉しいから」


そう言うと、私の横を通って雅さんは歩き出した。


それ以上何も言わずに、私はただその後ろ姿を見つめるしかできなかったんだ。