「傘、入れてくれてありがとね」
無理矢理笑顔を作って、傘から出ようとした。
けれどその前に、腕を掴まれる。
「智也?」
「綾ちゃん、顔にですぎ。帰りたくないならそう言えばいいのに」
真剣な表情の彼が、私の腕を引いて自分の家へと招き入れた。
「今日親いねぇから、泊まっていいよ。
まず風呂入れ、服は適当に母さんの探すから」
智也はそう言うと、大きいバスタオルを私に渡した。
有無を言わせない感じが、今の私にはちょうど良いのかもしれない。
「ありがとう」
ダメとわかっていても、結局弱い自分は智也に甘えてしまう。
素直に家に上がらしてもらい、お風呂も借りた。
私が上がると、智也はソファに座りぼんやりとテレビを見ていた。
そして、私に気づいた智也は振り返る。
「綾ちゃん、母さんの服着てまだそんな余裕あんの?
母さんより細いってどんだけだよ。ちゃんとご飯食べてんの?」
「食べてるよ、着痩せするタイプだから」
「どの口が言うんだか」
やれやれという顔で私を見る智也。
いつものような態度で、内心私は感謝した。



