「私、もう濡れてるから別に傘いらないよ。智也が濡れちゃう」 「俺のことはいいから」 そんな何気ない優しさが、今の私にはとても温かくて泣きそうになる。 気づけば家が見えてきた。 けれど、帰りたくない。 元々親には泊まると言っていたから何か聞かれるのも嫌だし、暗いままだと心配をかけさせてしまうから、わざと明るく振る舞わないといけない。 けれどこれ以上、智也に迷惑はかけられないから。