本当はあいつの一件以来、ずっと怖かった。
あんな思いをするなら誰も好きにならない方がマシだとさえ思った。
信じていたからこそ、騙された時の衝撃は大きかったんだ。
「綾、ちゃん…?」
その時、聞きなれた声が耳へ届く。
正直、会えると思っていなかったわけではない。
けれど、こんなにもタイミングよく会えるだなんて。
「綾ちゃん、こんな雨の中何してんだよ」
ゆっくり振り向くと、智也が半分驚きながら心配そうに私を傘の中へと入れた。
「傘は?なんでそんな濡れてんだよ。
風邪ひくだろ」
「うん、そうだね…」
「…………」
それ以上智也は何も言わなかった。
けれど、私が濡れないようにと傘を傾けてくれる。



