お願い、好きって言わないで。




「綾さん」

不安と、過去の恐怖が入り混じっていると。
雅さんに名前を呼ばれてハッと我に返る。

お風呂上がりの雅さんも、智也のように色気が増す。
なんて、この状況でもまだ智也を思い出すから不思議だ。


「不安?」
「ううん、全く」
「強がりは良くないな」

雅さんは小さく笑い、優しく唇を重ね合わせてきた。

「……ん」

いつもより長めのキスに、私はそっと目を閉じて受け入れる。

少し息が乱れると唇が離され、そのままベッドの上へと運ばれた。


「綾さん、怖いなら言って」


その問いかけにも、私は怖くないと首を横に振る。
大丈夫、怖くないから。


『あんなに俺のこと好き好き言ってたくせに』


『ふざけんな、綾』


『お前は黙って俺に抱かれとけばいいんだよ』



ここにきて、嫌な思い出ばかり蘇る。


「……っ、嫌!」


雅さんが私の服に触れた時、無意識に雅さんを押し返し、それを拒否していた。

視界に映るのは、少し離れて驚く雅さんの姿。