お願い、好きって言わないで。




そして、職員室へと歩いてる途中。


何となく窓の外を見ると、人通りの少ない場所で智也と一人の女子生徒が立っていた。

そんなの見るだけですぐ無視すればいいものの、私はつい立ち止まってしまう。


何を話しているのかは聞こえないのだけれど、恋愛系の話だろうとは思った。


すると智也はその女子生徒に背中を向け、歩き出そうとした……と思ったら、女子生徒は泣きながら智也に後ろから抱きつく。


「……っ」


そんな女子生徒を見て、胸がたまらなく苦しくなった。
本当は智也だって高校生らしい恋愛をしてほしい。


だからあんな風に、真っ直ぐに智也を想ってくれる人と付き合ってほしい、はずなのに───


「いや、だなぁ…」


ぽつりと呟いたところで智也が女子生徒を離し、こちらを向いて目が合う。


私は急いで視線をそらして歩き出した。


もう私は子供じゃないんだから、こんなことでドキドキしてたまるか。


大丈夫。
どんどん雅さんに惹かれていってると思うから、大丈夫だって。



そう自分に言い聞かせ、私は学校の勤務時間が終わるのを待った。