お願い、好きって言わないで。




言い訳なのはわかっているけれど、そうでもして目の前の彼に身を任せたかった。


「どうだか。
綾ちゃんってどんだけずるいんだよ」


ごめんね智也。
もう、忘れるから。


「もう全部どうでもよくなるくらい、俺に堕ちればいいのに」


智也は抱きしめる力を強めた。
私は抵抗一つせず、大人しくする。


「好きだよ、綾」


この時、私も同じ言葉を返せたらどれだけ良かっただろうか。
もう本当は気づいてる。

だけど私が臆病なばかりに逃げてばっかりいるんだ。


何も返さない私の頭を彼は優しく撫でる。
子ども扱いをするかのように。

ただ私はそれを受け入れ、気づけばその温かな腕の中で意識は途切れていた。


次目を覚ました時には、昨日のことがまるでなかったかのように、ベッドの上に私はいた。