「なんでって言われても、先手打ったのはそっちだから。
勉強合宿の日さ、綾ちゃん俺とあいつの会話聞いてただろ?
そしたら次の日からいきなり避け出すし、なんとなくわかったんだよ」
どうやら全部智也にはバレていたみたいで。
「けど、ずっと寂しかったんだな。さっきの言い方何?
怒って、わざときつい口調になって。
さっきの嫉妬、まじで可愛かった」
「……っ」
「でも少しくらいは信じろよな。
俺、綾ちゃんしか見えてねぇんだよ」
「だって智也はモテる、から……」
こんなことを言ってしまったら、嫉妬したことを認めているのも同然だ。
「じゃあ、本気にしたってことはそういうことでいい?」
また、あの悪そうな笑顔を見せる。
そういうことに、なるけれど。
「谷原先生、すっごくいい人なの。
容姿だけじゃなくて中身もかっこよくて、男らしくて。
少しは智也に揺らいだけど、今私の中には谷原先生しかいないよ」
やっぱりダメ。
ここで私は引けない。



