「とりあえず入りなよ。
髪も濡れてるし風邪ひくよ?」
「ありがとう」
前までの私ならきっと、智也のことを追い返しているだろう。
それなのに、今は家の中へ入れようとしているから不思議だ。
久しぶりに面と向かって話す智也は、意地悪そうな表情ではなく、ひどく落ち着いてるように見える。
「家、誰もいねぇんだ?」
「そう。どっちも今日は帰ってこないらしくて」
智也がソファに座ったから、私もその隣に座った。
「それで、話って何?」
こうして改まって話することでもあるのだろうかと思い、予想できなくて次の言葉を待つ。
「谷原先生と付き合ったのか?」
相変わらず落ち着いた声音。
そのため、少し言葉の意味を理解するのに時間を要した。



