「綾さん?」


「……え?」
「ぼーっとしてるけど、どうした?」


夜になり、谷原先生とご飯に行った私。
今ではすっかりお互い下の名前で呼ぶようになっていた。

ちなみに私は谷原先生のことを雅《みやび》さんと呼んでいる。


さらに二人の時は敬語もやめ、お互いタメで話していた。


「あ、いや、なんでもない……ごめん」
「中谷のこと?」


中谷。
彼の名前が出てきて、体が嫌でも反応した。


「彼女ができたんだってな。
俺は良かったと思うけど」

「そうだね」
「じゃあなんで浮かない顔してるんだ?」


じっと私を見つめる雅さんは、まるで私の心の中を全て読み取っているように見える。

全部、バレていそう。