「あ、黒崎先生」
廊下を歩いていると、突然声をかけられる。
それは振り向かなくても誰かわかった。
学年主任の谷原先生だ。
「谷原先生、今日はお疲れ様です」
「黒崎先生の方がお疲れでしょう。
本当に全教科できるんですね」
「高校の問題までなら、なんとか」
「それでもすごいですよ。今日は黒崎先生がMVPですね」
谷原先生に褒められ、嫌な気は全然しないしむしろ嬉しい。
「谷原先生に言われると嬉しいです」
「何言ってるんですか、そんなこと言われるとこっちが恥ずかしくなりますよ。」
けれど本当のことだ。
谷原先生はまだ三年目なのに、学年主任も任された上に生徒や他の先生からの信頼も厚い。
そんな短期間で信頼されるほどの人なのだ。
「あの、黒崎先生」
谷原先生が、ふと真剣な表情へと変わる。
一体何を言われるのか、わからなくて思わず構えた。
「なんでしょうか」
「俺は、生徒との恋愛は成立しないと思ってます」
あまりにも急に言われたから、思わずビクッと反応してしまう。



