お願い、好きって言わないで。




智也の吐息がかかり、鼓動が速まる。
おかしい、この気持ちはもう昔に置いてきたはずだ。


それなのに、どうして───


「……ん」

そっと優しく重ねられた唇。
思わず彼の服を掴む。

この気持ちを抑えるように。
頭の中で何度も否定した。


そして、唇の温もりが離れていく。


「続きは今日の夜にしてやるよ。
綾ちゃん、まだ物足りないだろ?」


わざと、甘く耳元で囁いたかと思うと、私を見つめてくる智也。


その表情は真剣で、さらには美しい獣のようで───


「反則なのはどっちよ…」


その声は、バス内の雑音へとかき消された。