「これもくじ運だよな」
智也は悪そうに笑い、その姿を見た女子はきゃーと悲鳴をあげ、男子も黙る。
「イケメンは何言ってもかっこいいってなんなんだよ」
「俺たちの負けだよな」
「やばくない!?私もあんな意地悪そうに笑われたい!」
高校生はこの表情にもときめくの?
残念ながら私は、一ミリたりともときめかない。
そこがもうおばさんだ。
「じゃあ出発しますね」
バスの運転手さんがマイクを通してそう言い、出発した。
とりあえず大人しく窓側に座る私だけど、今考えれば少しおかしい。
「ねぇ、酔いやすいのになんで窓側座らないの?」
「んー?一番前なら大丈夫なんで」
引っかかったな、とでも言うようにニヤリと笑う智也の表情は私にしか見えない。



