「まあ、向こうでも色々あったから…」
「それに、綾も俺と会えなくなるの寂しくなるんじゃねぇの?」
仕返しのつもりが、逆に智也か、そんなことを言われる始末。
確かに会えなくなるのは寂しいから、家から通ってくれて嬉しい気持ちの方が強い。
「まあ、そうなんだけどね…」
「あ、今日は素直だ」
そう言って笑う智也。
結局はいつも、彼のペースになってしまう。
「素直じゃない私は嫌い?」
「そんなわけないだろ。そもそも綾は言葉にしなくても行動でわかるし、顔に出てる」
まさにその通りで何も言い返せない。
どうしても顔に出てしまう私は、隠すことができないのだ。
それからも智也と他愛のない会話をしているうちに、最寄りの駅が近づいてきた。
家に帰ってしまえば明日からまた仕事が始まる。
もちろん会おうと思えばいつでも会えるのだけれど、寂しいのには変わりない。
それぐらい智也のことが好きになっているのだ。
けれどもう今は、手を伸ばせばすぐ近くに智也がいる。
そう思うとこれから先も乗り越えられる気がした───