すると今度は、優しく触れるだけのキスを落とす智也。
「俺が忘れさせてやるよ」
またそうやって、甘く私を誘うんだ。
けれど今の私は、混乱のあまり思考が追いつかない状態だったから、精一杯の力を振り絞って智也を押し返す。
少し力が緩まっていたからなんとか隙間ができ、そのチャンスを私は逃さなかった。
急いで智也の家を出て、自分の家へと帰り部屋にこもる。
「……っ」
思い出すのは、あいつの記憶と見たことがない智也の強引な姿。
私を好きって本当なの?
けれど、智也はやっぱり幼なじみで一人の生徒。
教師が手を出すだなんて許されない。
それに私は智也のことを、そういう目で見れないから───
これからも生徒として智也を見ることを決めた。
それから一週間。
智也とは特に何もなく、教師として過ごす日々が始まったのだと私は思っていた。