「待ってたって…打ち上げとかないの?」
「綾ちゃんと話したくて断った」
断ったとさらっと言うけれど…卒業した後の打ち上げくらい行ってほしい。
なんて、言えるわけないけれど。
だって嬉しかったから。
私を待っていてくれたのだと思うと。
それにしても───
「見事にボタン、なくなってる」
ブレザーのボタンだけでなく、袖のボタンでさえもなくなっている智也。
「まじ、やばかった。
女子の裏を見た気分。争奪戦がもう怖かった」
苦笑しながら言う智也を見て、私は気の毒だなって思いつつ笑った。
「あ、笑ったな?」
「ごめんごめん、想像したらおかしくって」
けれど、第ニボタンもなくなっている。
つまり誰かにあげたということだ。
いくら仕方がないとはいえ、第ニボタンをもらった子が羨ましい。
さすがにこんな大人の私が欲しいとまでは思わないけれど、少しばかり妬いてしまう。
ただそれだけの理由なのだけれど。



