「今日はスーツなんですね」


敬語の智也はやっぱり違和感がある。
けれど、どこか新鮮な感じもするから不思議だ。


「当たり前でしょう?
今日は卒業式なんだから」

「それもそうですね。」


私の言葉に対し、智也は目を細めて笑う。
そんな些細な仕草でも、私の胸を高鳴らせた。


「じゃあまた後で」


智也はそう言って私より先に歩き出し、靴箱へと向かった。


そういうのを見ると、やっぱり私は教師で智也は生徒なんだと気づかされる。

けれどそれも今日で終わり。


幼なじみの関係だけに戻れて嬉しい反面、もうこれから平日でも会えないという寂しい思いもある。