クリーニングに出していたスーツを袋から外す。
それをきちんと着こなし、鏡の前に立つ。

そこで身だしなみを整え、完璧にした。
いつもよりメイクもちゃんとしたつもり。


もちろんそこまで目立ったメイクはしないけれど。


今日の主役は私なんかではなく、卒業をする三年生なのだから。


教師になって初めての卒業式。
教え子の生徒たちが将来に向けて旅立つ日だ。


「気づけば一年、あっという間だったな…」


正直いい思い出ばかりではなかったのだけれど。
教師としての生活は充実したものだった。


そして学校に着くと、朝早くから登校している生徒たちがいた。

中には髪をセットしている人たちもいる。


五年前の卒業式もこんな感じだった。
制服を着るのが最後だと思うだけで、寂しかった。


まさか教師になってまた着ることになるとは思っていなかったけれど。