結局また智也に負けたな、だなんて思っていると、彼が私の手を握った。
「やっと受験終わった。
これから多少はゆっくりできる」
智也は嬉しそうにそう言った。
「でももうすぐ卒業式だよ?
智也の青春時代もあとわずかだね」
これからは智也も大人入り。
だから今のうちに青春時代を充実させないと。
もう大人になってしまえば、青春時代には戻れないから。
「早く卒業してぇよ」
けれど智也は卒業したいと言う。
「なんで?」
「だって卒業したら、誰の目も気にせずに綾ちゃんと色々なところ行けるだろ」
まあ頻繁には無理だけど、と付け加え智也は苦笑した。