「でも先生、智也くんとは幼なじみなんでしょ?そんなこと知らなくて私、ただの嫉妬でこんなこと…」


「全部が全部、若槻さんは悪くない。
涼太にだって私にだって悪かった部分もある。

それに好きな人ができたなら、嫉妬ぐらいしても当然だから」


その声に、その表情に嘘はなかった。

本気で言ったことなのだろう。
声も表情も作っているものではなかった。


綾ちゃんはさっき俺のこと優しい人だと言った。
なら俺も言わせてほしい。


俺が初めて好きになった彼女は、俺なんかよりもずっと心が広くて優しい人だと。


若槻はその言葉を聞いて、さらに泣き出し謝り続けた。

綾ちゃんは若槻を恨んだりはしない。
恐らくあの男のことも、彼女は恨むことはせずに忘れようとするだろう。


それが綾ちゃんだから。
そんな彼女のことを俺は、こんなにも好きになったんだ。