「智也、ありがとね」
少し静かになった病室で、綾ちゃんが俯き加減で俺にお礼を言う。
「何言ってんだよ。これくらい当たり前だろ。
それに俺の方こそ遅くなってごめんな」
「なんで智也が謝るの。本当に智也には感謝してる。
あの時、ギリギリのところで踏みとどまってくれてありがとう」
踏みとどまってくれて……?
一瞬なんのことかわからずに考え込む。
すると俺の中で答えが出る前に、綾ちゃんが小さく笑いながら話し出した。
「涼太を殴るの、やめたのって私のためでしょ?」
どうやら綾ちゃんには俺の考えてることがわかったらしい。
「だってあそこで殴ってたら、そいつと一緒になるだろ?」
感情のままに動き、相手の傷つける。
あいつと同じやり方はしたくない。
そう言って綾ちゃんを見れば、彼女の目が潤んでいた。
「智也は智也だよ……だけと、本当に私のことを考えてくれてて嬉しかった。
助けに来てくれた時、智也を見ただけで本当に安心したの」
潤んだ瞳が俺を捉える。
その瞳に吸い込まれるようにして、俺は綾ちゃんの元へと近づいた。



