静かな帰り道。
寒い風が吹く中、智也が私の手をそっと包んだ。


「今日、びっくりしたね。
年明け早々に嫌なスタートだなぁって」


少し冗談っぽく言ってみる。

昔のことなんか気にしていない、とでも言うかのように。


単なる強がりに違いないのだけれど、ここで弱いところを見せたって彼を困らせるだけ。


「……綾ちゃん」
「なんかお腹すいてない?どこか店探す?」
「綾ちゃん」


智也が私の手を強く握る。


「もう、大丈夫だから」

その言葉が深く心に響いて。
気づけば目から涙がこぼれ落ちていた。


本当は今も怖かった。
さっき、涼太と会ってしまっただけで。

過去の出来事と今の涼太の姿が私の頭を支配していた。


「俺の前では強がる必要はねぇよ」

私の肩を抱き寄せる智也。
私は抵抗せず、素直に身を預ける。