早く落ち着くんだと頭の中で唱えていると、智也のお父さんに「青春だな」と言われて笑われた。
いや、私はもう大人だから青春なんてとうの昔に過ぎ去った。
なんて言い返しはしないけど、心の中で思う。
するとその時、自然に智也は私の隣に腰を下ろした。
「さあさあ智也くん、いっぱい食べて受験に向けて頑張るんだよ」
「ありがとうございます」
智也は人柄がいいから、大人からも好かれるタイプだ。
だから気に入られやすいのはわかる。
わかるけれど。
「あなたたち、せっかくだから初詣でも行ってきたら?」
「あら、それはいいわね」
どちらの親もいきなり何を言いだすんだ。
もし智也と初詣に行ったら、最悪教師をクビになる可能性だってある。
思わずそれを言いそうになるが、必死でこらえて丁寧に断る。



