そして授業が終わり、廊下を歩きながらほっと息をついたその時。
「黒崎先生」
また胸がドキッと高鳴ってしまった。
私の名前を呼んだのは、紛れもなく智也だったからだ。
「どうしたの?」
とりあえず必死で平常心を保つ。
本当に胸が高鳴るの、やめて欲しい。
いい歳して何ときめいてんだ。
心の中で自分を責め、私の目の前で立ち止まった智也を見上げる。
「今日の放課後、空いていますか?」
「放課後?」
嫌な予感がした。
むしろ、嫌な予感しかしない。
「過去問のことでいくつか質問したくて」
それなら家に帰って聞けばいいものの、わざわざ学校でやる意味がわからない。
つまりこれは、きっとわざと。
私の反応を見て、楽しんでいるだけ。
「中谷くん、ごめんなさいね。
今日は先生、用事があって…」
「少しだけでも無理ですか?俺も放課後、予定があるのですがその前に聞こうと思っていて」
だから家帰ってから聞けばいいのに。
そう思い、智也を睨むけれど効果はなし。
「……さっき、女から連絡きた」
突然、智也の声のトーンが落ちる。
意地悪そうな笑み。
慌てて周りを見るけれど、十分休みのため幸い人はいない。



