どうして若槻さんが、あいつの名前を知っているのか。
私にはわからなくて、頭が混乱する。
思考がうまく働いてくれない。
それは、久しぶりにあいつの名前を聞いたせいだ。
できれば頭から消えてほしかった記憶───
「実は私のお兄ちゃんが、先生と同い年で同じ大学だったんです。若槻って苗字の人、いませんでした?
気になってお兄ちゃんに先生のことを聞いてみたら、すごい悲しい話が聞けました。先生、相当辛い思いしたんですね?」
わざと私の傷口をえぐるような言葉を選んでくる。
とりあえず平常心を保ちたかったけれど、到底無理そうだ。



