「もう大丈夫?」
そろそろ下校の時間が近づいてきたため、私は彼女にそう聞いた。
「あ、あともう一つだけ質問が」
けれど若槻さんはまだ質問があるらしく、私は彼女の言葉を待つ。
「黒崎先生は谷原先生と付き合ってるんですよね?結婚はしないんですか?」
「…え?結婚?」
予想外の質問に、戻ってしまう私。
「はい。2人ともお似合いじゃないですかー」
その笑顔は明らかに作っていて、少しぞくっとする。
若槻さんを纏う空気が、一瞬にして変わった気がした。
「その質問は控えさせてもらおうかな」
わざと話をそらし、立ち上がろうとしたその時。
バンッと、彼女が勢いよく机を叩いた。
「若槻さん?」
「本当に黒崎先生って勉強なんでもできるんですね。すごいです」