けれど、それでいいのだろうか。
ふと頭に疑問がよぎる。

だって彼は何も知らない。
惨めな私のことを、全部。


隠している、私自身。


怖かった。
全てを話したとして、その後の智也の反応が。


「綾ちゃん、正直初めてじゃねぇだろ?」

突然の質問に、思わずドキッとした。
まさかここにきて、こんな質問をされるだなんて。


「違う、けど……怖い」

思い出してしまう、あいつとの記憶。
最初は本当に幸せだったというのに、一瞬でそれは崩れてしまった。


「怖い、から……智也のことも拒否してしまいそうで」

いつどこで、突然頭をよぎるかわからない。
雅さんの時だってそうだった。


大丈夫だと言い聞かせていても、思い出してしまう。
私はいつまでも、あいつから逃れられない。


「じゃあ試してみる?」
「え…」
「拒否するかどうか」

まさかの言葉。
私自身、返答に困ってしまう。


「なんて、冗談。余裕がないわけじゃねぇし、綾ちゃんが俺に揺らいでることも知ってるから、焦ることでもないしな」

「なっ……」
「どんな綾ちゃんでも、俺は絶対嫌いにならねぇし好きねままでいれる自信しかねぇから」


頭をぽんとして、智也は起き上がる。
最後の言葉に私は泣きそうになった。