慌てて彼の腕を掴む。


「もう、そこはダメ」
「拒否ばっかだな」
「思った以上に智也が危険すぎたの」

ようやく彼は、そこから手を離してくれた。


良かった。
あれ以上いくと、さすがの私だって止められなくなりそうで。


「今度は何してるの」

せっかく解放されたというのに、今度はリボンを外されてしまう。


「痕の確認。
ちゃんとはっきり残ってんな」

「ねぇ、手の位置がおかしいんだけど」

痕がつけられた位置に手を添えるのならまだしも、明らかに胸元を狙っている。


「厳しいな。触られたら触られたで感じるくせに」
「だか……っ、本当にダメ」

彼の手の動きに反応を示してしまう。
それだと相手の思うツボだ。


「あー、ダメだ綾ちゃん。
そろそろ限界きそう」

「じゃあやめてよ」
「求めたのは綾ちゃんだろ」


このまま私は、智也に抱かれてしまうのだろうか。
けれど今の彼はまだ、理性を欠いているようには見えない。


「ダメか?」

ああ、その聞き方はずるい。
優しい声音に、優しい表情。

私の答えを求め、じっと見つめてくる揺らがない瞳。


逆に私の心は揺らいでしまう。
智也となら……なんて、思ったり。